民間介護保険は本当に必要ない?―公的保険と費用から考える判断ポイントー

公的介護保険があるのに、さらに民間の介護保険まで入るべきかどうか、迷う人は少なくありません。結論から言うと、民間介護保険は「誰にとっても必ず必要な保険」ではなく、家計や家族構成によっては必要な人と、なくてもよい人に分かれます。

この記事では、公的介護保険でどこまでカバーできるのか、実際の介護費用はいくらぐらいかかるのかを整理したうえで、民間介護保険の役割や、加入しない場合にどのような備え方があるかを分かりやすく解説します。

この記事でわかること 3点

  1. 公的介護保険で受けられるサービスと自己負担のイメージ
  2. 民間介護保険のメリット・デメリットと「必要な人/必要ない人」の違い
  3. 民間介護保険に入らない場合の、貯蓄や他の保険を使った備え方

まず結論:民間介護保険は「必要な人」と「なくてもよい人」に分かれます

最初に一番気になる結論から整理します。

民間介護保険は、「入っていないと危険」というものではありません。
ただし、すべての人に同じ答えが当てはまるわけでもありません。

ここで押さえたいのは、次の3点です。

  • 介護の費用は、公的介護保険があっても自己負担が残る
  • 自己負担をどこまで貯蓄でまかなえるかは、ご家庭ごとに違う
  • その差額を保険でカバーするかどうかは、「家計と家族の状況」で決まる

民間介護保険が「誰にでも必須」ではない理由

多くの保険商品は、「万一の時の安心」のために加入します。介護保険も同じです。ただ、保険料を払い続けるのはご自身です。

たとえば、次のような人を想像してみてください。

  • 退職金や預貯金がしっかりあり、持ち家で住宅ローンも完済している
  • 子どもが近くに住んでおり、ある程度サポートが見込める
  • 公的介護保険のサービスも積極的に使うつもりでいる

このような環境・状況のかたは、介護費用の多くを貯蓄と公的介護保険でまかなえる可能性が高く、民間介護保険の優先度は下がります。

一方で、

  • 貯蓄があまりなく、単身で暮らしている
  • 自営業で、収入の変動が大きい
  • 子どもが遠方で暮らしており、近くに世話をしてくれる身内がいない

といった人は、介護になったときの自己負担が家計を圧迫しやすいため、民間介護保険の検討が必要と考えられます。

判断のポイントは「公的保険+介護費用+ご家庭の状況」

民間介護保険が必要かどうかを考えるとき、次の3つを並べて考えると整理しやすくなります。

  1. 公的介護保険でどこまでカバーされるか
  2. 実際の介護費用(在宅・施設)がどれくらいかかりそうか
  3. ご家庭の貯蓄・収入・家族のサポート体制

この3つを同時に考えることで、

  • 「公的介護保険と貯蓄で十分足りそうだから、今は民間介護保険は不要」
  • 「貯蓄に余裕が少ないので、一定の保障があったほうが安心」

といった、自分にあった答えに近づきやすくなります。

保険の相談現場でも、「最初は『必要ないと思う』と来店された方が、数字やライフプランを一緒に整理する中で、『このくらいなら加入したい』『やっぱり今は様子を見たい』と、結論に納得されるケースが多くあります。判断の出発点は、人それぞれ違います。大事なのは、何となくではなく、自分にとっての合う・合わないを具体的に検討することです。

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公的介護保険の仕組みとカバーできる範囲を押さえよう

民間介護保険の話に入る前に、公的介護保険がどんな制度なのかを簡単に整理しておきます。ここを土台に検討をスタートします。

公的介護保険で利用できる主なサービス(在宅・施設の概要)

公的介護保険は、40歳以上の人が保険料を納めることで、介護が必要になったときに一定の介護サービスを1~3割の自己負担で使える制度です。[1]

要介護認定(要支援1〜2、要介護1〜5)を受けると、次のようなサービスを利用できます。

在宅サービス

  • 訪問介護(ヘルパーによる生活援助・身体介護)
  • 通所介護(デイサービス)
  • 訪問看護、福祉用具のレンタル など

施設サービス

  • 特別養護老人ホーム(特養)
  • 介護老人保健施設(老健)
  • 介護医療院 など

これらのサービスには、「要介護度に応じた支給限度額」が決まっており、その範囲内であれば、利用者は原則1割(一定所得以上は2〜3割)の自己負担でサービスを利用できます。[1]

自己負担のしくみ(1~3割負担・利用者負担のイメージ)

仕組みのイメージを、簡単な図で見てみましょう。

出典:「介護事業所・生活関連情報検索」(厚生労働省)を基に作成

このように、公的介護保険は介護サービスの費用をかなり抑えてくれます。ただ、食費・居住費・日用品など、生活にかかるお金は別途必要です。また、支給限度額を超えてサービスを利用する場合、その超過分は全額自己負担になります。

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実際の介護費用はいくらかかる?在宅と施設の目安

「介護費用はいくらかかるのか」という不安は多くの人が抱くものです。ここでは、在宅介護と施設介護に分けて、一般的な目安を紹介します。

在宅介護の一時費用・月々の費用のイメージ

在宅介護の場合、初期費用としては

  • 手すりの設置や段差解消などの住宅改修費
  • ベッドや車いすなどの福祉用具の購入・レンタル費

などがかかります。公的介護保険には住宅改修や福祉用具に対する補助もありますが、それでも自己負担はゼロにはなりません。

月々の費用としては、

  • デイサービスや訪問介護の自己負担分
  • 食費・光熱費・医療費
  • 家族の交通費や、仕事を調整することによる収入減

などが重なっていきます。

施設介護(有料老人ホームなど)の一時費用・月々の費用のイメージ

有料老人ホームなどの施設に入る場合、

  • 入居時の一時金(0円〜数百万円以上と幅広い)
  • 月額利用料(10万円台後半〜30万円以上など、施設や地域によって差)

がかかります。

公的介護保険が適用されるのは、介護サービス部分の一部です。居住費や食費はほぼ自己負担になるため、在宅介護よりも月々の支出が増えるケースが多くなります。

公的介護保険で賄える部分と自己負担部分の違い

在宅介護と施設介護の費用イメージを、表にして整理してみましょう。

出典:
厚生労働省「サービスにかかる利用料
厚生労働省「介護報酬の算定構造
厚生労働省「介護保険最新情報Vol.1280
総務省「家計調査報告(家計収支編)2024年(令和6年)平均結果の概要

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民間介護保険とは?公的介護保険との違いと役割

ここからは、民間介護保険の役割について見ていきます。

民間介護保険でカバーできるのはどんな場面か

民間介護保険は、保険会社が販売する商品で、「所定の介護状態になったとき」に保険金や年金が支払われる保険です。

たとえば、

  • 公的介護保険制度連動して一定以上の要支援・要介護認定を受けた場合
  • 保険会社が定める「日常生活動作が〇つ以上できない」などの条件を満たした場合

に、

  • 一時金(まとまった金額)が支払われるタイプ
  • 毎月一定額が年金として支払われるタイプ

があります。

この保険金は、

  • 介護サービスの自己負担分
  • 施設の居住費や食費
  • 家族の交通費や、仕事をセーブすることによる収入減

など、ご家庭の状況に合わせて自由に使えます

一時金タイプ・年金タイプ、終身・定期タイプの違い

民間介護保険には、主に次のようなタイプがあります。

  • 一時金タイプ
    - 所定の介護状態になったときに、まとまった保険金が支払われる
    - 自宅のリフォーム費用や、施設入居時の一時金など、大きな出費に備えやすい
  • 年金タイプ
    - 介護状態が続いている間、毎月一定額が受け取れる
    - 継続的な自己負担(施設の月額費用など)に充てやすい

さらに、保障期間によって

  • 終身タイプ(生涯にわたって保障)
  • 定期タイプ(60歳まで、70歳までなど、一定期間のみ保障)

に分かれます。

終身は保険料が高くなりやすい一方で、いつ介護になっても保障される安心感があります。定期は保険料を抑えやすい代わりに、保障期間を過ぎると保障がなくなります。

民間介護保険のメリット・デメリット

民間介護保険のメリットとデメリットを整理してみましょう。

民間介護保険の主なメリットは、

  • 介護になったときにまとまったお金や毎月のお金を用意しやすい
  • 貯蓄が十分でない場合でも、一定の備えができる

一方で、デメリットとして、

  • 一生支払う保険料(または一定期間の保険料)が家計の負担になる
  • 保険会社が定める条件を満たさないと、保険金が支払われない可能性がある
  • 物価や制度の変化によって、当初の想定通りのカバーができないこともある

といった点があります。

相談の現場では、「安心だから」という理由だけで厚めの保障を選び、後から保険料の負担がきつくなって見直しに来られる方もいらっしゃいます。メリット・デメリットの比較、家計とのバランスをしっかり考慮することが大切です。

民間介護保険が「なくてもよい人」と「あった方がよい人」

ここからは、「自分の場合はどうか」という視点で考えていきます。

民間介護保険を「なくてもよい」と考えやすいケース

次のような条件に当てはまる人は、民間介護保険を必須と考えなくてもよい場合があります。

  • 退職金や預貯金など、老後資金に十分な余裕がある
  • 持ち家で住宅ローンも完済しており、家賃負担がない
  • 子どもが近くに住んでいて、介護の一部を担ってくれる可能性が高い
  • 共働きではなく、家族の誰かが介護の時間を取れる余地がある

このようなご家庭では、公的介護保険を活用しつつ、足りない分は貯蓄から出す形で対応できるケースが多くなります。民間介護保険を「入らない」と決めても、大きな不安にはつながりにくいと言えるでしょう。

民間介護保険が「あった方が安心」になりやすいケース

反対に、次のような条件が重なる人は、民間介護保険が支えになる場面が増えます。

  • 貯蓄があまり多くなく、老後資金にも不安がある
  • 単身世帯、または子どもが遠方にいて、介護の担い手が限られている
  • 自営業やフリーランスで、介護が始まると収入が大きく減りやすい
  • 住宅ローンが残っており、固定費の負担が大きい

このような場合、介護になったときの自己負担が家計に与える影響が大きくなります。一時金や毎月の保険金があることで、施設費用や在宅介護の自己負担を賄いやすくなるため、民間介護保険が「心の支え」にもなりやすいです。

※公益財団法人 生命保険文化センター:「2022(令和4)年度生活保障に関する調査」を基に作成。

チェックリストで自己診断してみよう

ご自身の状況を、簡単なチェックリストで振り返ってみましょう。

介護保険の必要性チェックリスト

チェック項目 はい いいえ
老後の生活費とは別に、介護費用として使える貯蓄が十分にある
持ち家で住宅ローンは完済している
子どもや兄弟など、介護を手伝ってくれそうな家族が近くにいる
現在の仕事をセーブしても、家計がすぐには苦しくならない
一人暮らし、または夫婦のみで、介護を担う家族がほとんどいない
自営業やフリーランスで、働けなくなると収入が大きく減る
貯蓄はあるが、介護で一気に減らしてしまうのが不安だ

▼判断の目安

「はい」が多い項目が前半に偏る人は、民間介護保険を急いで検討しなくてもよい場合が多い。
後半に「はい」が多い人は、民間介護保険を含めた備え方を一度検討しておく価値がある。

実際の相談では、「チェックしてみたら、思っていたよりも貯蓄でカバーできると分かった」「逆に、自分の弱いところが見えてきて、少し保障があった方が安心だと感じた」と話してくださる方もいます。

大事なのは、今のご家庭の状況を一度「見える化」することです。

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民間介護保険に入らない場合の備え方(代替策)

「民間介護保険は、今は入らない」と判断した場合でも、備えをゼロにする必要はありません。ここでは、代わりにできることを整理します。

まずは貯蓄・家計の見直しでできる備え

民間介護保険に加入しない場合、第一の柱になるのは貯蓄と家計の見直しです。

  • 老後資金の中で、「介護にまわせる目安額」をざっくり決めておく
  • 教育費が一段落したタイミングで、毎月の貯蓄額を増やす
  • 不要な保険やサービスがないか、支出を見直す

こうした取り組みは、介護だけでなく老後全体の安心につながります。

医療保険・就業不能保険など、他の保険でカバーできる部分

すでに加入している保険が、介護の場面で役に立つこともあります。

  • 医療保険:入院や手術の費用をカバーし、介護前後の医療費負担を抑える
  • 就業不能保険・所得補償保険:働けなくなった場合の収入減をカバーする

これらの保険がしっかり機能していれば、介護になったときの家計のダメージを和らげられることがあります。同じリスクを二重に保険でカバーしていないかを確認する意味でも、一度全体を見直してみる価値があります。

「今は加入しない」場合の見直しタイミングの考え方

介護の備えは、一度決めて終わりではありません。

  • 40代の今は「貯蓄優先」で、民間介護保険は先で考える
  • 50代後半で親の介護状況や自分の健康状態を見ながら、改めて検討する
  • 退職前後で老後資金の全体を確認し、必要があれば保障を追加する

このように、5〜10年ごとに見直す前提で考えると、自分に適した判断ができるでしょう。

相談現場でも、「以前は子どもの教育費負担が大きく、介護保険には入らなかったが、その後余裕が出てきたので、少しだけ保障を足した」という方もいます。今はできる範囲で備え、将来の見直しも視野に入れておくことが、無理のないやり方です。

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よくある質問(FAQ)

Q. 40代ですが、今から介護保険に入るべきですか?

A. 40代は、介護よりも教育費や住宅ローンの負担が大きい時期です。まずは家計全体を見直し、老後資金と介護資金を合わせてどのくらい準備できそうかを確認してから考えるとよいでしょう。保険料が家計を圧迫するようなら、今は貯蓄を優先し、50代以降の見直し時期に再検討する方法もあります。

Q. 50代・60代で加入するのは遅いですか?

A. 50代・60代での加入は、保険料は高くなりますが、「遅すぎる」とは限りません。親の介護状況や自分の健康状態が具体的に見えてくる年代なので、貯蓄や家族のサポート体制と合わせて検討できるタイミングとも言えます。無理のない保険料で、必要な期間だけ保障する選び方も候補になります。

Q. 親の介護に備えて、親名義で民間介護保険に入れるべき?

A. 親御さんの年齢や健康状態によっては、保険料がかなり高くなることがあります。親名義での介護保険よりも、親の生活費や介護費用をどこまで支援できるかを家族で話し合い、貯蓄や公的サービスの活用を含めた計画を立てるほうが現実的な場合も多いです。どうしても不安が強い場合は、少額の保障を検討するなど、家計とのバランスを見ながら考えるのがおすすめです。

Q. 公的介護保険の要介護認定の流れがよく分かりません

A. 要介護認定は、

  1. 市区町村の窓口で申請
  2. 訪問調査(本人の心身の状態を確認)
  3. 主治医の意見書
  4. 審査会での判定

という流れで行われます。[1]

詳細な流れや、申請時に準備する書類などは、自治体のホームページで案内されています。要介護度によって受けられるサービスの幅が変わるため、早めに手続きの流れを確認しておくと安心です。

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まとめ:今のご家庭に合った「無理のない備え方」を一緒に考えましょう

この記事のポイントおさらい

ここまでの内容を、あらためて整理します。

  • 公的介護保険は、介護サービスの費用を大きく支えてくれる制度だが、自己負担は残る
  • 民間介護保険は、「誰にでも必須」ではなく、貯蓄や家族のサポート体制によって必要性が変わる
  • 民間介護保険に入らない場合でも、貯蓄や他の保険、家計の見直しで備えを整える方法がある

大切なのは、「入るか、入らないか」の二択ではなく、自分やご家庭にとって無理のない備え方を見つけることです。

一人で悩まず、第三者と一緒に整理する選択肢も

介護やお金の話は、一人で考えていると不安が大きくなりがちです。

  • どのくらいの介護費用を見込んでおけばよいか
  • 現在の保険や貯蓄で足りるのか
  • 民間介護保険を足すなら、どのくらいがちょうどよいか

こうした疑問は、複数の保険商品を扱うFPや保険ショップに相談すると、公的制度と民間保険の両面から検討材料の整理を手伝ってくれます

ほけんの110番では、ライフプラン全体を踏まえながら、

  • 公的介護保険や介護費用のイメージを一緒に確認する
  • 現在の保険の内容をチェックし、重複や不足を洗い出す
  • 民間介護保険を「入る・入らない」両方の選択肢から検討する

といったサポートを行っています。

「とりあえず話だけ聞いてみたい」という方でも大丈夫です。一度整理しておくことで、「今何をしておけば安心か」が分かりやすくなります

【参考文献】

[1] 介護保険制度について - 厚生労働省, 公開日不明(随時更新)

[2] 介護給付費等実態調査 - 厚生労働省, 各年度版

[3] 家計調査 - 総務省統計局, 公開日不明

[4] 生命保険に関する全国実態調査(介護保障関連) - 生命保険文化センター, 最新版

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